ネパール人の夫と暮らす香子です。母国を離れて日本で暮らす夫のためにスパイス料理を勉強し始め、今ではスパイスを使わない日がない毎日。使ってみるとスパイスは料理の幅を広げてくれるだけでなく、健康度も上がりました。
そこでスパイスの本を20冊以上読みあさり、Harvard Medical Schoolなどの専門サイトからも情報収集してみると、スパイスって実は生薬!ということが分かってきました。
最近”血糖値スパイク”という言葉をよく耳にします。普段は正常値の血糖値が、食後に急激に上がることです。これ、実は命を脅かす恐れもある怖い症状なんです。
そこで心がけたいのが血糖値を下げる習慣です。スパイスも血糖値を抑える食品の一つで、一部のスパイスは伝統的にも現代の医学的にも、その効果が限定的ではあるものの、血糖値を抑える効果が確認されています。
「スパイス料理なんてしない」と不安に思わなくても大丈夫!この中の5つはカレー粉に使われるスパイスですよ!
シナモン/カシア
シナモンは甘い食べ物の甘さを引き立てる効果がある甘い香りを持ちます。大きくは「トゥルーシナモン(セイロンシナモン)」と中国やインドネシア、ベトナムなどで生産される「カシアシナモン」と2種類あります。
砂糖の使用量を抑える
シナモンの甘い香りは、甘さを強める作用があります。そのため、砂糖の量を抑える二次的な効果を持っているといえます。
これも血糖値を下げる効果につながります。
使う砂糖を減らしてシナモンパウダーに置き換えたり、コーヒーに砂糖を入れる方なら、シナモンスティックでコーヒーを2、3回かき回せば、砂糖を入れなくても甘い香りが立ちますよ。
血糖値・中性脂肪の改善
シナモン摂取で血糖値と中性脂肪の値が改善したという研究結果がいくつかあり「糖尿病にシナモンがよい」というのは、たびたび言われます。
日本人の糖尿病患者のほとんどが該当する2型の糖尿病患者の血糖値を低下させるためのサプリメントあるいは治療食として、シナモンサプリが流通しています。
シナモンが糖代謝を改善する効果を持つことは、それまでも試験管内実験で確かめられていましたが、2003年には糖尿病患者でも効果が報告されています。1日1〜6gのシナモンを40日間摂取した2型糖尿病の人が、血糖値や中性脂肪値が2〜3割、総コレステロール値が1〜2割下がったのそうです。
このときシナモンの服用量を1日1g、3g、6gの3段階に設定しているが、服用した量と効果とには関係がなかったことから、もっと少ない量でも期待できるかもしれません。その後もシナモンが血糖値を低下させると言う報告が報告された試験があるようですが、ヘモグロビンHbA1C値にはあまり影響しないことが示唆されされています。
健康なヒトで行われた試験では、血糖値スパイクを抑えたという報告もあります。
ただ、これに関しては医学的なエビデンスとしては限定的なものという段階ですので薬としてシナモンを扱うことはキケンです。あくまでも「補助的な効果に期待」ということでご理解くださいね!また、サプリメントは凝縮されたものになるので、ちょっと多めに摂れば過剰摂取になりやすいです。インストラクションに従った摂取をお願いします!
参考)PubMed PubMed 日経メディカル CNN health Cochrane
肝臓に問題がある場合はシナモンの過剰摂取に注意
肝臓に問題がある方でシナモンのサプリメントを検討している方は、まずは主治医に相談ください。また、その他血糖値を下げる薬を常用している場合も留意が必要です!
クミン
カレーを連想させる強いエスニックな香り。カレーだけでなくメキシコ料理やアフリカ料理などにも使われます。いわゆる”エスニック料理”だけじゃなくて、ミートソースにちょっと入れたり、チーズと合わせても、一味違う雰囲気になる便利なスパイスです。
そんなクミンは血糖値を下げる効果もあるかもしれません。
ある実験では、2型糖尿病の患者をクミンの精油100㎎、50mgと偽薬を経口するグループに分けて8週間後に確認したところ、クミンの精油グループでは明らかに血糖値、インスリン、ヘモグロビン値が下がっていました。
これらは、すべて肥満コントロールの項目です。
ただし同様の別の実験では、曖昧な結果が報告されています。
フェヌグリーク
フェヌグリークは中東などでは豆として食する地域もあり、タンパク質源として重宝もされてスパイスの域をこえている存在。日本では身近なスパイスとは言えませんが、インドやその周辺の国では台所に欠かせないスパイスです。
その大部分は食物繊維。40~50%の食物繊維と約35%のタンパク質からなります。
WHOの委託を受けたニュージーランドの大学がおこなった試験では、食物繊維の多い食物を多く食べている人は、まったく食べない人に比べると、2型糖尿病だけでなく、心臓病や脳卒中がんなどの慢性疾患のリスクが低下することが、報告されています。
ちなみに食物繊維には水溶性と不溶性がありますが、水に溶ける性質のある「水溶性食物繊維」は、糖質の吸収を遅らせて血糖値の上昇を抑える効果があります。
実際、フェヌグリークの効果についてのいくつかの研究では、フェヌグリークを食べた2時間後の血糖値が明らかに下ます!
また、フェヌグリーク小さじ1には、1日摂取量の20%の鉄分、マグネシウムは5%ほども含まれます。
マグネシウムは、筋機能や神経機能の調節、さらにはタンパク質、骨、 DNA の生成など、体内の多くのプロセスにとって重要です。そして血糖コントロールや血圧調整などを制御する酵素系の補助因子でもあります。
ある実験では1型糖尿病の人に毎日2回、昼食と夕食の後フェヌグリークパウダーを50g摂ってもらったところ、10日後には血糖値が改善され、悪玉コレストロールLDLの値が減ったことが報告されてます。
クローブ
クローブがインシュリン分泌を促進し、血糖値を下げたという実験結果があります。
糖尿病ラットを使った実験ですが、クローブの精油が血糖値を抑えたそうです。
他にも同じような実験があるようです。
また、シナモンと同じく、クローブは甘い香りを持ちます。この香りをうまく利用することで、料理に使う砂糖の使用も控えることができます。
ターメリック
ターメリックはカレーにおなじみの黄色いスパイス。日本語ではウコンですが、ウコンと言えば「肝臓によい」というのはでも有名な話ですよね。
これはターメリックの黄色成分クルクミンのなせるわざ。
アルコールが肝臓で分解されるとできるアセトアルデヒドの分解スピードを、クルクミンが速めてくれるため、二日酔いに効果を発揮してくれるというわけです。
クルクミンは、胆汁の分泌を活発にし、肝機能の改善効果もあるとされていますが、脂肪乳化、タンパク質分解の助けとなります。その結果、脂肪が腸で吸収されやすくなって余計なコレストロールが効率よく体外に排出されます。これは糖尿病や高血圧の予防につながります。
実際、ある試験ではクルクミンが血中グルコースを減らすことが示唆されており、同時に研究者たちは糖尿病を防ぐ働きをする可能性を確認しています。他の実験でも、ターメリックのサプリメントで血糖値が安定したことが示唆される結果が得られています。
中国で行われた13年もの長期にわたる研究では、クルクミンはインスリン感受性を高く改善し、高い血糖値に積極的な効果が確認されたと報告しています。ただしこれは動物を使った試験で、ヒトに対しての効果は未確認のようです。
コリアンダー
血糖値を下げる効果がコリアンダーシードにはあることが、動物実験で分かっています。血糖を減らす酵素を活性化し、血糖値を下げる効果があることが示唆されています。
これはラットを用いた研究ですが、肥満状態と高血糖のラットにコリアンダーのエキスを摂取させたところ、血糖値が下がったというもの。この効果は2型糖尿病の治療に用いられる薬「グリベンクラミド」に似た効果だったそうです。
逆に効果が強いため、低血糖のヒトはコリアンダーシードの摂取には注意した方がよいかもしれません。
参考)Hypoglycemic and hypolipidemic effects of Coriandrum sativum L. in Meriones shawi rats Effect of coriander seed (Coriandrum sativum L.)
ローリエ/ローレル
ローリエはすがすがしい清涼感のある香りを持ちます。これは香り成分の50%程度を占めるシオネールによるものです。他にもオイゲノール、リナロールも含んでいます。この精油成分がカラダに良いと言われれています。
なお、ローリエは、ローレル、ベイリーフとも呼ばれ、厳密にはベイリーフはシナモンの葉であり、他の二つとは違い種類。
ある研究ではローリエのエキスを摂取したところ2型糖尿病のグループでは血糖値の減少がみられたことが報告されています。また、ローリエを煮出したお茶を1-日飲んだところ、コレストロール(HDL)の改善傾向がみられたという研究結果もあります。
ただし、食後のインシュリン値には影響がみられませんでした。食事で摂取したブドウ糖がインシュリンの働きによってエネルギーとして利用されるため、インスリン分泌が促されることが大切と考えると、この効果は十分とは言えませんが、期待のできるところですね。
あとがき
ご紹介したスパイスはカレー粉に使われているものばかりですが、かといって日本の市販のカレーは結構脂っこいです。
比べてスパイスから作るカレーは油の量を自分で調整できますし、健康が気になる方はぜひおすすめです。
また、スパイス料理はカレーだけじゃありません。炒めものやデザートなどにも利用できます。ぜひ、トライしてみてください。
それでは、また!